国立映画アーカイブ 7階展示室では、2020年9月12日(土)から約3ヶ月にわたり、展覧会公開70周年記念 映画「羅生門」展を開催します。
世界のクロサワと称された黒澤明監督(1910〜1998)による映画「羅生門」。
撮影現場、宣伝公開から映画祭受賞、世界への影響まで—日本映画史上の傑作を徹底解剖!
また開催期間中には、「生誕100年 映画俳優 三船敏郎」と題して、10月2日(金)から3週間にわたり、三船敏郎出演映画の特集上映も開催します。
公開70周年記念 映画「羅生門」展について
この展覧会では、世界初展示の品も含めてこうした名スタッフの功績の実際をデジタル展示も用いて紹介するほか、それぞれくっきりした人物像を創造した三船敏郎・京マチ子・森雅之・志村喬といった名優にも注目、さらにはヴェネチアでの受賞をめぐる当時の資料やこの映画が世界に与えた影響についても触れます。
映画「羅生門」とは?
1950年8月26日に劇場公開された映画「羅生門」は、国内では大ヒットにはならなかったものの、監督黒澤明の芸術的な野心が認められ、1951年9月にヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞、さらに1952年3月に米国アカデミー賞名誉賞を受けることで国際的な評価を確立し、黒澤の、ひいては日本映画の水準の高さを世界に知らしめ、戦後復興のひとつの象徴にもなりました。
「羅生門」は、黒澤の卓越した演出力だけでなく、それまでの日本映画の作り方を革新した数々のスタッフワークに支えられています。
登場人物のそれぞれ食い違う証言が真実を覆い隠してしまう橋本忍の脚本術、ロケーションを活かしあえて太陽にキャメラを向けた宮川一夫の斬新な撮影、巨大な羅生門をオープンセットとして造形した松山崇ら美術スタッフの功績、日本の中世の物語にボレロ調の旋律を大胆に組み込んだ早坂文雄の音楽、そのような職能のアンサンブルがこの映画の醍醐味となっています。
公開70周年記念 映画「羅生門」展の展示構成と見どころ
黒澤明と日本映画の実力を世界に知らしめた「羅生門」を、企画から撮影、公開、世界展開にいたるまで、各種の資料によって多角的に迫り、本作を彩る様々なエピソードを再検証するとともに、デジタル技術を使った新しい資料展示の可能性にも取り組みます。
第1章 企画と脚本
のちに名脚本家となる橋本忍がデビュー前に書いたシナリオが、映画「羅生門」になるまでには多くの変転がありました。
本章では、芥川龍之介作品への着目から始まったアイディアが映画の企画となり、ひとつの映画シナリオへと結実するまでをご紹介します。
第2章 美術
「羅生門」は、2つだけのセットとロケーションという一見安上がりな企画でしたが、羅生門のセットは撮影準備中に黒澤のイメージが膨らんで、通常の予算を上回る巨大なものとなりました。本章では製作時から話題となっていた映画美術に焦点を当てています。
第3章 撮影と録音
太陽に向けられたキャメラや近隣の水道を止まらせるほど大量の水を使った雨のシーンなど、「羅生門」の撮影は多くのエピソードに彩られています。
本章では、撮影の宮川一夫、スクリプターの野上照代の撮影台本を使った新しいデジタル展示の試みや関係者のインタビューを交えながら、「羅生門」の撮影の秘密に迫ります。
第4章 音楽
「羅生門」前後の黒澤作品の音楽を手掛けた早坂文雄は、優れた作曲家というだけではなく、黒澤監督の創作活動にも影響を与えた盟友でした。
有名なボレロ形式のテーマの楽譜スケッチなど、早世した天才作曲家が残した貴重な資料を通じて、映画の構成を活かした早坂独自の創作術をかいま見ることができます。
第5章 演技
本章では三船敏郎と志村喬の撮影台本を中心に、限られた登場人物と複雑な構成を持つ「羅生門」を成功させた俳優たちの多大な貢献に着目いたします。
第6章 宣伝と公開
本章では、初公開からヴェネチア国際映画祭受賞後の凱旋上映やリバイバル公開など、国内上映の軌跡をご紹介します。
特に劇場公開オリジナルポスターや公開直前に開催された特別試写会など、金獅子賞受賞前の「羅生門」を伝える貴重な資料にご注目ください。
第7章 評価と世界への影響
1951年のヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞は、世界が日本映画を“発見”したと同時に、日本映画界が世界に通用する自らの実力に気づくきっかけになりました。
本章では、ヴェネチア映画祭出品の経緯とともに、受賞後の反響と影響を、アメリカを中心に多角的にご紹介します。
特別コーナー:旅する羅生門
このコーナーでは各国のポスターや宣伝材料を中心にご覧いただきながら、「羅生門」の卓越した国際性に光を当てます。
「生誕100年 映画俳優 三船敏郎」について
戦後の日本映画にギラギラとした活力を注ぎこみ、黒澤映画と共に世界へ羽ばたき、多くの映画ファンや映画人から愛された不世出の映画スター・三船敏郎(1920〜1997)。
本特集では、三船のデビュー作「銀嶺の果て」(1947)をはじめ、初主演作「醉いどれ天使」(1948)や「羅生門」(1950)、「七人の侍」(1954)といった代表的な黒澤作品はもちろんのこと、爽やかな青年医師や武骨な父親、乗客の人生模様を見つめるタクシー運転手、暗黒街を捜査する刑事、威厳のある軍人など、三船の俳優としての芸域の広さを示すさまざまな出演作品を上映。
さらに、三船唯一の監督作品「五十万人の遺産 LEGACY of the 500,000」(1963)および、プロデューサーとしても手腕を発揮した「黒部の太陽」(1968)、「風林火山」(1969)、「赤毛」(1969)といった三船プロ製作の大作、そして最後の出演作「深い河」(1995)もラインナップに含み、計27作品(27プログラム)によって、この偉大な俳優の足跡を振り返ります。
「生誕100年 映画俳優 三船敏郎」の見どころ
デビュー作から遺作まで…膨大なフィルモグラフィから厳選した27作品を上映
生誕100年を記念して、27歳から75歳までの三船の映画人生をスクリーンで振り返る大型特集プログラムです。
映画史上でも名高い代表作に加えて、再評価すべき秀作も取り上げて足跡を辿ります。
時代劇・アクション映画・社会派ドラマでの精悍でエネルギッシュな熱演とともに、ホームドラマや恋愛映画での人情や優しさあふれる好演も特筆に値します。
主演作の他、独特な存在感を示した助演作「男ありて」「妻の心」「この二人に幸あれ」も取り上げます。
三船の豊かなキャリアを回顧するとともに、新鮮な魅力に触れる機会になればと願ってやみません。
三船と組んだ名匠たち
黒澤明、稲垣浩、谷口千吉、岡本喜八、本多猪四郎、成瀨巳喜男、木下惠介、熊井啓、山田洋次…
日本映画を代表する名だたる監督たちとの協働を重ねてきた三船の出演作には日本映画史のエッセンスが凝縮されています。
監督やプロデューサーとして日本映画を支えた “世界のミフネ”
1962年以降は、自身のプロダクション・三船プロダクションを率いて、監督やプロデューサーも兼ねながら精力的な映画作りを行い、日本映画を支えました。石原プロとタッグを組んだ超大作「黒部の太陽」や、本格時代劇「風林火山」は、当時の日本映画年間トップの興行成績を記録しました。三船プロ製作の5作品を上映し、俳優の枠にとどまらない日本映画への貢献をひもときます。
バリアフリー上映「暗黒街の対決」
三船のハードボイルド的な魅力が凝縮された娯楽アクション映画「暗黒街の対決」(1960、岡本喜八)のバリアフリー上映を行ないます(10月17日(土)13:30の回)。
聴覚障害の方向けの日本語字幕と、映画の音声を増幅するヒアリングループシステム座席をご用意しています。また、視覚障害の方向けの音声ガイドをFM配信し、ラジオ貸出もいたします。詳細は公式サイトをご覧ください。
公式サイト:https://www.nfaj.go.jp/exhibition/mifune202009/#section1-6
協力:社会福祉法人 聴力障害者情報文化センター、Palabra株式会社
「生誕100年 映画俳優 三船敏郎」の上映作品リスト
- 「銀嶺の果て」(新版)1947年、谷口千吉監督
- 「醉いどれ天使」1948年、黒澤明監督
- 「婚約指環(エンゲージ・リング)」1950年、木下惠介監督
- 「羅生門」[デジタル復元版]1950年、黒澤明監督
- 「馬喰一代」1951年、木村惠吾監督
- 「港へ来た男」1952年、本多猪四郎監督
- 「吹けよ春風」1953年、谷口千吉監督(※英語字幕付き上映)
- 「七人の侍」1954年、黒澤明監督
- 「顔役無用(男性NO.1より)」1955年、山本嘉次郎監督
- 「男ありて」1955年、丸山誠治監督
- 「妻の心」1956年、成瀨巳喜男監督
- 「蜘蛛巣城」1957年、黒澤明監督
- 「この二人に幸あれ」1957年、本多猪四郎監督
- 「暗黒街の対決」1960年、岡本喜八監督
- 「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」1960年、松林宗惠監督
- 「用心棒」1961年、黒澤明監督
- 「どぶろくの辰」1962年、稲垣浩監督
- 「五十万人の遺産 LEGACY of the 500,000」1963年、三船敏郎監督
- 「大盗賊」1963年、谷口千吉監督
- 「侍」1965年、岡本喜八監督
- 「黒部の太陽」1968年、熊井啓監督
- 「連合艦隊司令長官 山本五十六」1968年、丸山誠治監督
- 「風林火山」1969年、稲垣浩監督
- 「赤毛」1969年、岡本喜八監督 ※英語字幕付き上映
- 「日本の首領(ドン) 野望篇」1977年、中島貞夫監督
- 「男はつらいよ 知床慕情」1987年、山田洋次監督
- 「深い河」1995年、熊井啓監督
イベント開催概要
いずれも東京都中央区京橋にある「国立映画アーカイブ」で開催されます。
開催概要:公開70周年記念 映画「羅生門」展
■展覧会名
公開70周年記念 映画「羅生門」展 / Rashomon at the 70th Anniversary
■会場
国立映画アーカイブ 展示室(7階)
■会期
2020年9月12日(土)0〜12月6日(日)
11:00〜18:30(最終入室は18:00)
休室日:月曜日
■料金
一般250円、大学生130円、シニア・高校生以下および18歳未満・障害者(付添者は原則1名まで)・国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料
■主催
国立映画アーカイブ、京都府京都文化博物館、映像産業振興機構
協力:文化庁、株式会社KADOKAWA、株式会社アイ・ティー・ワン
■公式サイト
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/rashomon2020/
- 料金は常設の「日本映画の歴史」の入場料を含みます。
- 学生、シニア(65歳以上)、障害者、キャンパスメンバーズの方はそれぞれ入室の際、証明できるものをご提示ください。
- 国立映画アーカイブの上映観覧券(観覧後の半券可)をご提示いただくと、1回に限り一般200円、大学生60円になります
- 2020年11月3日(火・祝)「文化の日」は、展示を無料でご覧いただけます。
開催概要:生誕100年 映画俳優 三船敏郎
■企画名
生誕100年 映画俳優 三船敏郎 /Toshiro Mifune Retrospective at His Centenary
■会場
国立映画アーカイブ 長瀬記念ホールOZU(2階)
■会期
2020年10月2日(金)〜10月22日(木)
休館日:月曜日
■料金・チケット
一般520円、高校・大学生・シニア310円、小・中学生100円、障害者(付添者は原則1名)・キャンパスメンバーズは無料
新型コロナウイルス感染症予防のため、前売指定席券のみとし、当日券は扱いません(障害者及び国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズを除く)
【前売指定席券】
一般・シニア・学生の方は前売指定席券をご購入ください。
9月18日(金) 10:00より、チケットぴあにて全上映回の前売指定席券(全席指定席・通常90席)を販売します。
[Pコード:551-139]
【障害者・キャンパスメンバーズ等券】
障害者(付添者は原則1名まで)ならびに国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズを対象に、各日の開館時より1階受付にて障害者・キャンパスメンバーズ等券(21席)発券をします。
■主催
国立映画アーカイブ
■お問い合わせ
050-5541-8600(ハローダイヤル)
■公式サイト
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/mifune202009/
[施設情報]国立映画アーカイブ
所在地 | 〒104-0031 東京都中央区京橋3-7-6(→Googleマップ) |
交 通 | 東京メトロ銀座線京橋駅1出口から徒歩1分、都営地下鉄浅草線宝町駅A4出口から徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7出口から徒歩5分、JR東京駅八重洲南口から徒歩10分 |
時 間 | 11:00〜18:30(最終入場は18:00) |
休館日 | 月曜日、上映準備・展示替期間、年末年始、館内整備期間 |
URL | https://www.nfaj.go.jp/ |
国立映画アーカイブで開催の企画