横浜市は、カジノやホテル、MICE施設を含む統合型リゾート(IR)の誘致に正式参戦すると発表しました。候補地は山下埠頭(ふとう)で、整備計画の認定を受けてカジノ免許が付与されれば、2020年代後半を目標にIRの開業を目指します。
地域経済におけるIRの波及効果は、建設時で7,500億~1兆2,000億円、開業後で6,300億円~1兆円/年にのぼると試算し、IRへの訪問者数は2,000万~4,000万人/年を見込んでいます。
横浜市の現状と課題(カジノ誘致)
横浜市の記者発表資料で紹介されていた横浜市の現状と課題を紹介してみます。意外な点もあり勉強になりました。この現状と課題は、カジノ誘致で解決できる!というわけです。極論かもだけど。
横浜市の現状と課題:観光の現状
インバウンドインバウンドインバウンド…よく聞く言葉で日本でも大盛況の印象が強いインバウンド(訪日外国人観光客)ですが、日本はインバウンド消費が他国に比べて低いようです。これは横浜ではなく日本の話。せっかく日本に来ている訪日外国人に対してもっとお金を使ってもらわないともったいない!という話。
インバウンドは成長産業であり、外国人宿泊者数も劇的に増加しています。2020年東京オリンピックまでは増加傾向は続くとみられるものの、日本国内においても、横浜市は他都市に比べて外国人宿泊者数の伸び率が低いという現状。ましてや神奈川県の伸び率よりも、横浜市の外国人宿泊者数の伸び率が低いという惨状。
これもおもしろいデータで、東京都に来る観光客の53%が日帰りらしいのですが、横浜市に来る観光客は87.3%が日帰りなんだそうです。宿泊する率が低いという。
さらに1人あたりの観光消費額も著しく低い。対 東京だけでなく、全国平均よりも低いのはちょっと意外でした。
■日帰り観光客の消費額
全国:15,526円
東京都:18,740円
横浜市: 6,282円
■宿泊観光客の消費額
全国:49,732円
東京都:55,855円
横浜市:33,896円
横浜市の現状と課題:首都圏およびグローバルな都市間競争
東京23区に比べると、横浜市の上場企業数や法人市民税収入が低いのは当然。がしかし、ここまで差があって、なおかつ大阪市や名古屋市よりも全然低いというのは知りませんでした。
国際会議っていわゆる上級な方々が大挙して押し寄せるので、宿泊施設やレストラン施設など、客単価の高い需要が見込まれます。横浜市にはパシフィコ横浜があって、国際会議なども頻繁に開催されている印象がありませんか?
2017年に行われた実際の国際会議件数は、東京23区が269件。対して横浜市は32件。
ソウルが688件、シンガポールにいたっては877件を誇ります。横浜市の27倍にものぼります。そもそも横浜市には国際会議を開催できるほどの施設が少ないという面も強いようです。
そもそもMICEとは?
Meeting(会議・研修)、Incentive(招待旅行、travel, tour)、Conference(国際会議・学術会議)またはConvention、Exhibition(展示会)またはEventの4つの頭文字を合わせた言葉である。ビジネスと関わりがあり多数の人の移動を伴う行事という、企業などの会議やセミナー、報奨・研修旅行、国際会議や総会・学会、展示会・見本市・イベントなど、観光および旅行の観点から着目した総称で、「ビジネスイベンツ」とも呼ばれている。
横浜市の現状と課題:横浜を支える人口・経済の見通し
横浜市は少子化の中でも人口増加している昨今ですが、2019年をピークに人口減少にシフトすると言われています。個人的には2020年ちょいまで増加する気もするけれど…。
生産年齢人口の減少、老年人口の増加により、消費や税収の減少、社会保障費の増加など、経済活力の低下や厳しい財政状況の見込みとなります。
2019年時点では2.5人で1人の高齢者を支える図式も、2065年には1人で1人の高齢者を支える基盤になると予測されるため、安定的な財政が必要不可欠となります。
そこで、これまで挙げてきた「インバウンド消費の増加」「日帰り・宿泊客の消費額増加」「観光客の宿泊率上昇」「大企業の誘致・税収増加」「国際会議の開催数増加」「財政の改善・安定化」を解消する策がIR誘致となります。
横浜市のIR誘致における提案内容
2018年度調査では、12事業者が海外事例と⽐べても遜⾊ない、⺠間による⼤規模な開発投資を伴う、IRの事業性を⾒込んでいることが⽰されました。
横浜市のIR(統合型リゾート:Integrated Resort)では、事業者から主に3施設が提案されています。
テーマは、「ビジネス客からファミリー層、国内外からの観光客だけでなく、横浜市民の皆様にも楽しんでいただける統合型リゾートの実現の可能性」。
- MICE施設
- 宿泊施設
- エンターテイメント施設
これにカジノ施設が加わります。
①MICE施設
・我が国最大級の国際会議場や展示施設
・施設規模:138,000~192,000㎡
パシフィコ横浜に加えて、パシフィコ横浜ノースが建設されていますが、それでもまだ足りないようです。
②宿泊施設
・グローバル水準のラグジュアリーで大規模なホテル
・客室数:2,700~4,800室
みなとみらい周辺では、ホテル建設のゴールドラッシュが巻き起こっていますが、それでもまだ足りないようです。1棟で日本最大客室数を誇る「アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉」で2,311室なので、複数のホテル棟を想定しているのかもしれません。
③エンターテイメント施設
・一流のエンターテイメントが提供されるアリーナ
・子供も楽しめるアトラクション施設
劇場や水族館、レストランなども想定はされているようですが、あくまでも現段階ではすべてがイメージです。
横浜市のIR誘致の候補地は山下ふ頭
場所は、山下埠頭(ふとう)を想定。
海岸エリアで広大な敷地を取れる、かつ利便性の高さがあるのはここしかないでしょうね。
ただしここには横浜港運協会の有志がMICEなど、有効施設を目指しているので…バチバチになる予感。
横浜市のIR誘致における経済波及効果
では統合型リゾート施設を誘致できたとして、どれくらいの経済効果や事業性が見込めるのでしょうか。
観光の振興
2,000万~4,000万人/年(内、国内観光客割合:66~79%)
東京ディズニーリゾート3,255万人(2018年)
ユニバーサルスタジオジャパン1,494万人(2017年)
4,500億~7,400億円/年
地域経済の振興
(間接効果含む)
・建設時 7,500億~1兆2,000億円
・運営時 6,300億円~1兆円/年
みなとみらい21地区建設投資額:約2兆625億円(1983年~2016年)
(間接効果含む)
・運営時 77,000~127,000人/年
財政改善への貢献
820億~1,200億円/年
納付金収入、入場料収入、法人市民税、固定資産税、都市計画税
2018年度 法人市民税539億円
横浜市のIR誘致におけるまとめ
施設内容も決定ではないし、事業者も決定ではないし、そもそもカジノ免許が付与されるかすら、これからになります。まずは本格的な検討・準備を経てIR事業者の選定が。ただ、カジノ設置断固反対の横浜港運協会などの団体と揉めるのは必至でしょうね。ハマのドンが大々的に動き出す可能性大。
ひとまずIR区域整備計画の申請に向け、本格的な検討・準備に必要な額、2億6,000万円を補正予算に提出します。内訳として、「交通アクセス対策等検討調査、測量等に7,500万円」「依存症実態調査に3,000万円」とか…すごいなぁ。
個人的には、カジノ誘致・導入が決定とするならば、癒着の業界&ロクでもない経営者がいる(経験談)パチンコは全廃でいいのでは。その代わりカジノをガッッチリ引き締めて運営してくれるなら。依存症や治安悪化など、不安材料は山積です。どうなることやら。