歴史と近代が交錯する魅力的な観光スポットが多数存在する開港の地、横浜。
その中でも個人的に好きなのは、みなとみらいにある汽車道という遊歩道です。
汽車道とは、かつて貨物輸送・旅客輸送のために利用されていた「臨港線」の鉄道廃線跡が港湾緑地として整備され、帆船が係留されている日本丸側から横浜ワールドポーターズのある新港地区を、2つの人工島と3本の橋梁で結んだ約500mほどの散歩道のこと(1997年開園)。
JR・横浜市営地下鉄ブルーライン桜木町駅から新港地区(横浜ワールドポーターズ、カップヌードルミュージアム、赤レンガ倉庫、ハンマーヘッド、マリン&ウォーク、万葉倶楽部)に行くには最短の徒歩ルートでもあります。
汽車道には、臨港線の廃線レールが敷設されていて、当時の名残を感じられます。
“目的地”としてはあまり注目されない場所ですが、桜木町駅と新港地区をむすぶ道として往来する際に、歴史を感じながら歩いてみると、また別の視点を楽しめるのではないでしょうか。
汽車道の上にはロープウェイのヨコハマエアキャビンが走っています♪
本記事では、普段はなかなか見ることのできない、補修工事中のむき出し線路の写真も含めて横浜みなとみらいの汽車道の魅力について紹介します。
ところどころに歴史ガイドのQRコードもあるので、読み込んでみてください。
横浜で発見、本物の線路を楽しむ遊歩道「汽車道」
桜木町駅前から3つの橋梁(きょうりょう)をまたいで横浜ワールドポーターズのある新港地区(運河パーク)に接続、さらにそこから赤レンガ倉庫の旧横浜港駅までつながる汽車道。
汽車道には、横浜臨港線開通と同じ時代に架設されたアメリカ製やイギリス製のトラス橋(港一号橋梁〜港三号橋梁)が改修・保存されており、実際に使用されていた線路とともに往時の雰囲気を感じながら散歩することができます。
これら3つの橋は横浜市認定歴史的建造物にもなっています。
横浜市認定歴史的建造物のトラス橋
港一号橋梁(1909年架設)
構造:鋼トラス橋
設計者:鉄道院
製作者:アメリカン・ブリッジ・カンパニー
アメリカ系トラス橋
桜木町駅側に一番近い橋です。
港二号橋梁(1909年架設)
構造:鋼トラス橋
設計者:鉄道院
製作者:アメリカン・ブリッジ・カンパニー
アメリカ系トラス橋
港三号橋梁(1906年架設)旧大岡川橋梁
構造:鈑桁橋(鋼ワーレントラス橋)
設計者:鉄道院
製作者:川崎造船所兵庫分工場
イギリス系トラス橋
港三号橋梁は鉄道が存在していた当時この場所に架かっていたわけではなく、もとは夕張川橋梁(北海道炭礦鉄道)と江戸川橋梁(総武鉄道)を転用した、横浜生糸検査所引込線の大岡川橋梁でした。
そのうち夕張川橋梁の部分を1997年に移設したもので、イギリス系トラス橋として貴重な遺構でもあります。
ナビオス横浜“絵画の額縁”から見る横浜の今と昔
汽車道をまたぐように建てられているホテル ナビオス横浜は、絵画の額がモチーフとなっており、横浜の景色を絵画のように見ることができるよう設計されています。
そもそも建築の際の構想として、遊歩道である「汽車道」の一環として建築されたそうです。
桜木町駅を背にして覗くと横浜赤レンガ倉庫などが見える“古きよき横濱”の景色、
また反対側から覗くと横浜ランドマークタワーなどの“新しいヨコハマ”の景色が楽しめるという写真映えスポットでもあるのです。
そして汽車道の廃線路は、ナビオス横浜の下を通り、
一度途切れた後、赤レンガ倉庫の敷地内でも見ることができます。
赤レンガパーク第一駐車場隣に復元・保存されている旧税関事務所遺構や横浜港駅プラットホームも歴史を体感できておすすめです。
花見の季節や夜景の楽しみ方
春は桜が咲き、花見を目当てに来る人も多いですね。
“汽車道目的”で来る人が一番多いのはこの季節かも?
また、昼間の景観も良いですが、みなとみらいの夜景を望める一等地でもある汽車道は、夜さらに映えます。
周囲のビルや観覧車がライトアップされ、みなとみらい・横浜北仲の全方位を撮影できるスポットとして個人的におすすめな場所。
ペットを連れた人も見かけるので、良い散歩コースにもなるのではないでしょうか。
他にも桜木町駅↔新港地区を往復する際、昼の行きは汽車道散歩、夜の帰りはロープウェイというのもおすすめです。
(右から)横浜市役所、ザ・タワー横浜北仲、アパホテル&リゾートの3棟が再開発で誕生しましたが、ここにあと2棟、大きな建物が建つ予定です。
この景色もあと数年でさらに様変わりしそうですね!
臨港線として活躍した線路、改修中の様子も紹介
1872年、日本初の鉄道が初代横浜駅(現在の桜木町駅)と新橋駅間に開通。輸出入品の輸送を担い、東京と横浜港を結ぶ重要な拠点となりました。
1911年には、初代横浜駅と新港ふ頭にあった横浜税関構内の横浜港荷扱所(後の横浜港駅)を結ぶ横浜臨港線が開通。
1923年の関東大震災を機に、ふ頭の再建にあわせて、横浜港駅に客船ターミナルや新しいプラットホームが設けられました。
1928年に築かれたこのプラットホームは今も赤レンガパーク内で保存されています。
貨物輸送・旅客輸送のために利用されていたものの、トラック輸送への移り変わりとともに臨港線も縮小の一途を辿り、後に廃線となりました。
旅客運送は1960年まで続き、それから約30年後の1989年には、横浜博覧会の開催にあわせてイベント列車として一時的に復活もしました。博覧会終了後は、臨海部の再開発計画の一環として保存されることになり、汽車道として1997年に整備された経緯があります。
もともと「ウィンナープロムナード」と呼ばれていたけれど、名称公募により「汽車道」に改称されたそうです。
汽車道内にあるレールは、実際に臨港線で使用されていた線路です。
価値ある歴史的遺構ですが、どうしても避けられない雨ざらし。
不定期的に改修工事も行われています。
2024年の改修工事では、老朽化した根太(ねだ)が交換され、床板も表面加工されていました。
むき出しの線路が見れるのはなかなか貴重です!
これでまた十数年は安心して歴史を後世に見せ続けられますね!
■所在地
横浜市中区新港2丁目9
■アクセス
・JR線/横浜市営地下鉄ブルーライン 桜木町駅より徒歩3分
・みなとみらい線 みなとみらい駅、馬車道駅より徒歩5分